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室長の小部屋

シニアに効果のある「クチコミ支援マーケティング」と具体例

「満足した顧客は最高のセールスマン」。これが、クチコミ商法の第一条であり、すべてである。例外はない。修正条項もない。「満足した」とは「商品」についての形容であり、すなわち「商品情報」についての言及である。商品の価値を高める情報を含まないクチコミは、ノイズにすぎない。満足したことのない他人が語る「ヤラセ」や「サクラ」は、論外である。コンテンツに嘘があれば、それは「マーケティング」ではなく、「詐欺」である。

それでは、これはどうだろう。

高齢者へのマーケティングはトリッキーだ。直接的なアプローチ、たとえば「70歳以上のための石鹸」などと言っても機能しない。従来通りの広告手段は失敗する。「テレビ広告を使うことはできない。彼らはそれを忘れてしまうからだ」30代のマーケティング担当者はうなる。「何度も何度も(TVCMを)見せても彼らはそれを思い出さない」彼はため息をついた。「結局クチコミしかないのです」。
– シルバーをゴールドに―高齢者へ向けたステルスマーケティング(The Economist 2011.07.30)※OKGW訳

うなる方が間違っている。「従来通りの広告手段」が失敗するのではなく、「情報を含まない広告」が失敗するのだ。TVCMが効果がないのは、「それを思い出さない」からではなく、「15秒で商品の価値を高める情報を届けることなど所詮無理」な話だからだ。

クチコミも同様である。第一条を思い出そう。クチコミが効果を発揮するのは「満足した顧客」によって、「商品の価値を高める情報」が、繰り返し見込客に伝えられた場合に限る。しかも、都合の悪いことに、クチコミは企業がコントロールすることのできない、やっかいなメディアだ。P&Gの前CEOアラン・ラフリーは、2006年にフォーチュン誌上で行われたGEのジェフ・イメルトとの対談で、当時新たに出現したYouTubeに代表されるソーシャルメディアについて、次のように語っている。

YouTube(に代表されるクチコミをまき散らすメディア)は、”Letting go(=ほっとけ)”なんだよ。”Letting go”とは、赤の他人がP&Gのイメージに影響を与えることに、慣れろということだ。消費者がブランドを受け入れるためには何でもしてきた企業にとっては、至難の業ではあるけどね。だからもし、P&Gに良いイメージを与えるビデオが YouTubeに投稿されたら、たくさんの人が見てくれと願うだけだし、もしそれが批判的だったら、わずかな人しか見ないでくれと願うだけだ。これが今、我々がいる世界なんだ。
– Immelt Wants Control While Lafley Lets Go(Ad Age By: Nat Ives Published: November 02, 2006)※OKGW訳に加筆。

もちろん、品質に自信があるならば、「たくさんの人が見てくれと願うだけ」でなく、ポジティブな情報があまねく行き渡るように、クチコミを「起動し、支援し、だれもが使えるようにする」ことは可能である。とくに、直に体験してみないことには良さが伝わりにくい商品(体験型商品)については、「結局クチコミしかない」というマーケティング担当者がいても不思議ではない。このようなマーケティング手法を「クチコミ支援マーケティング」と呼ぼう。

ハーレーダビッドソンが主催する「ハーレートライディング」しかり、スノーピークの「ファミキャンレポ」しかり。「満足した見込客」はやがて「満足した顧客」となり、「最高のセールスマン」へとステップアップするからだ。

事例1)ハーレーの新車試乗会「ハーレートライディング」

↑ハーレーを試乗されたお客様にいただいたコメントをご紹介します。皆様もお気軽に、全国のハーレー店でVツインの魅力をご体験ください!(ハーレーダビッドソンのサイトより)

事例2)スノーピークの体験キャンプ「ファミキャンレポ」

↑スノーピークさんのテントやシェルターは雨風の悪天候にも強いので安心です。子供はキャンプ場で友だちを作るのが楽しいみたいで、それはそれでいい傾向だなと思っています。(スノーピークのサイトより)

シニアにとっては、パソコンやスマホなどのデジタル機器も体験型商品の代表だ。彼らが購入をためらうのは、「はたして、使いこなせるだろうか?」という不安があるからだ。事実、カンタン(つまり、シニア向け)をうたってヒットした商品は、ツーカーセルラーグループ(当時)の「ツーカーS」か、富士通の「FMVらくらくパソコン」「らくらくスマートフォン」ぐらいしか、思い浮かばない。中でも、「ツーカーS」は、「クチコミ支援マーケティング」の成功事例としても名高い。この例を、デビュー広告の失敗も含めて、当時の報道から振り返ってみる。

事例3)この携帯電話には、説明書がありません。

商品企画グループの上杉直仁課長に下った指令は、シニア世代を取り込む商品の開発。条件は、「君の欲しい携帯を作ってはいけない」、「取扱説明書がいらないくらい簡単であること」の二つだった。上杉さんは、シニアの声を直接拾うために“巣鴨詣で”までして、ツーカーSの発売にこぎつけた。(日経ビジネスAssocie 2005.12.22より抜粋)

「取扱説明書がいらないくらいカンタン」な商品を作ったのだから、「この事実を伝えるのもカンタン」だと思い込んだのも無理は無い。しかし、ツーカーSがブレークしたのは、巣鴨のツーカーS体験イベントで、「カンタン体験」がクチコミで広がり、それをマスコミが取り上げたことによる。

 

←この広告じゃあ、わからんよね(筆者)。

事例4)ツーカーS、巣鴨の街に歓迎される

JR/都営三田線の巣鴨駅から、都電荒川線の庚申塚駅の間を結ぶ巣鴨地蔵通商店街を舞台に、同じ色のパーカーを着て、道をいく人たちに声をかけているのが、ツーカーS体験キャンペーンのスタッフたちだ。巣鴨を訪れる高齢者に「説明書が不要なほど簡単」なツーカーSを触ってもらい、実際に通話をしてもらって、その簡単さを知ってもらおう、という意図のキャンペーンである。

↑ツーカーS体験イベントが行われている巣鴨地蔵通商店街(左)、4Fが無料休憩スペースとして開放されているアイスクリーム店「桜花苑」。無料で試せるツーカーSも置かれている(右)

←「電車の中で切ってくださいと言われたらどうしたらいいの」など、いろいろ質問していた婦人。夫に電話をして、楽しそうに話していた

今回のイベントでは、気に入った人向けに契約も受け付けてはいるものの、あくまでツーカーSを体験することがメイン。「通話料はかかりませんので、好きなところに電話をかけてください」と言って、家族や友人に電話をかけるよう勧める。「かける相手がいない」という人にはスタッフが相手をするが、ほんの数メートル程度離れて話すだけで、とてもうれしそうな表情を浮かべる人も多かった。しばらくツーカーSを使ってみて、「これなら私にも使えそう、使ってみたい」と乗り気になり、契約していく人も見かけた。(ITmedia 2004.11.26より抜粋)

(津川義明)

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