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室長の小部屋

シニアの消費を引き出す『モノ→コト変換』

 最近、かつて一緒に仕事をさせていただいたAさんから絵葉書が届いた。投函地はアフリカのザンビア。バックパッカーとして1年をかけて世界を一周している途上。60歳できっぱりと仕事をやめ、定年前から十分に練り込んでいた第二の人生プランを着実に実行している、尊敬すべき先輩シニアである。

文面には「明日、キリマンジャロに登ります」とある

文面には「明日、キリマンジャロに登ります」とある

 50歳を過ぎてマラソンを始め、昨年、あの過酷なサハラ砂漠マラソンを「一生分の『しんどい』を使い果たした」といいながらも見事完走。今年、念願の世界一周にチャレンジ中。体力、気力、財力、…全てに恵まれた彼は「欲しい『モノ』はもうない。でもしたい『コト』はたくさんある」という。

 私の周りにいるシニアの人たちの多くは「もうモノは欲しくない」「モノを増やしたくない」という。飲み会でも「モノ」の話はほとんど出ない。孫の「コト」であったり、介護の「コト」が多い。かろうじておいしい「モノ」が話題に上がるくらいだ。かつては、クルマやカメラ、ギターのあれがほしい、これが気になると言う話も多かったが…。

 最も消費性向の強いといわれた団塊の世代さえ65歳を超え、モノにたいする消費意欲が減少していることは想像に難くない。少し前に「断捨離」という言葉がもてはやされたが、いまではそれが特別な言葉ではなく、当たり前の行動になりつつある。若い頃は「旅行にお金を使っても、モノになって残るわけではないのでもったいないなあ」ということが、いまでは「買ってもすぐ飽きるし、捨てたり、処分したりするのにも困る」となる。

 本当にシニアは「モノ」から離れ、「コト」にお金を使っているのだろうか。平成24年に内閣府が行なった団塊の世代への消費意向の調査にそのことが表れている。

平成24年度「団塊の世代の意識に関する調査結果」(内閣府)より

平成24年度「団塊の世代の意識に関する調査結果」(内閣府)より

 消費指向のトップこそ住宅に関するものだが、次は旅行、子や孫、健康と「コト」消費が続く(3位の貯蓄は消費ではない)。クルマ、家電といった「モノ」消費はぐっと少なくなっている。シニアは「モノ」でなく「コト」、もしくは「モノ」が「コト」に変わるものにお金を使いたがっている。

 では、「コト」にまつわる消費を個別に見ていこう。
まずは2位の「友人・知人等との交際や旅行」。まさに「コト」消費の代表である。調査によると団塊の世代では約4割が年2回以上海外へ旅行する(2013年2月 東京ガス「創食(団塊)世代に関する調査」)。 消費指向で「旅行」が上位にくるのはどの世代も同じだが、実際に行く頻度はシニアが多い。

 ではなぜ、シニアは「旅行」なのか。さまざまな理由があるが、私はシニアが日頃の生活で節約をしてでも旅行をするのは「コト」作りのためではないかと考えている。持ち時間が限られた中で、美しいものや珍しいものをどん欲に見たい、体験したいという思いがある。

旅行することは非日常を共有し、思い出として自分の中に「コト」として残すことができる。

旅行することは非日常を共有し、思い出として自分の中に「コト」として残すことができる。

 次は「子や孫のための支出」がくる。年齢的には子どもより孫世代への支出が多いだろう。孫へは七五三の費用であったり、三世代旅行代金、誕生祝いなど、「モノ」「コト」を含め、多岐にわたるだろうが、その代表な「モノ」である「ランドセル」を考えてみよう。

 2105年4月に「リビングくらしHOW研究所」「あんふぁん、あんふぁんぷらす」が共同発行した『ランドセル&入学準備白書』によると入学時に購入されるランドセルの約7割が祖父母からのプレゼントとなっている。購入時期も入学前ではなく、孫がお盆に帰省する8月がピーク。別の調査によると購入金額の平均は4万円前後だが、祖父母が購入する場合は、平均より高くなる傾向があるという。

 孫1人に4万円はシニアにとって安い金額ではないが、その出費をいとわないのはランドセルという「モノ」が孫の成長を喜ぶ「コト」に変換されているからである。ランドセルの購入までの孫や親(自分の子)との相談、品選びや買い物、そしてプレゼントの場など、ランドセルという「モノ」から多くの「コト」が生まれる。シニアはそうした「コト」全体に満足してお金を払うのである。

 その次は健康を保つための消費。「したい『コト』」を続けるためには健康が欠かせない。そのためにスポーツクラブに通い、健康を維持しようとしているシニアは多い。スポーツクラブに支払う金額からもそのことがうかがえる。1世帯1人当たりの支出額は60歳代がトップ。70歳代でも平均値を超えている。確かに私の通うスポーツクラブでもシニア比率はかなり高い(結構、ハードなジムなのだが…)。

「平成24年 経済産業省産業活動分析 平成24年年間回顧」より

「平成24年 経済産業省産業活動分析 平成24年年間回顧」より

 また、60、70歳代では3人に1人がほぼ毎日、健康食品(サプリメント含む)を利用している(「平成24年 内閣府「消費者の『健康食品』の利用に関する実態調査」より」。利用目的としては「健康増進」がトップ、以下「体調維持・病気予防」、「特定の栄養素の補給」と続く。健康食品、サプリメントは「モノ」ではあるが、したい「コト」に置き換えることができる。

 最後に注目したいのはシニアの「学び」である。消費金額はまだ順位としては低いが、これから「したい『コト』」を実現するために学ぶ費用は惜しまないシニアが増えると考えている。放送大学を始めとした通信制の大学や市民大学の受講生の多くはシニアであり、その数は増え続けている。私もいくつかの講座に通ったがシニアの数の多さとその熱心さに驚いた。

かなり専門的なテーマのセミナーや勉強会にもにシニアの参加者が多い

かなり専門的なテーマのセミナーや勉強会にもにシニアの参加者が多い

 学んだものを活かした「したい『コト』」に、ボランティア活動がある。単なるお手伝いではなく、プロボノであったり、まちづくり、地域活性化の取組みであったり…。これまでのキャリアと学んだ成果を活かして活動している。
いずれも基本的には無報酬であり、参加するための交通費や宿泊費、資料購入、取り組む仲間との懇親会の費用など、それなりの支出を伴う。先のAさんは全国の高齢者施設を回って世界一周の体験談を語るそうだ。もちろん、手弁当である。

つまりシニアの消費意欲をかきたてるには、いろいろな製品やサービス=「モノ」をどのように「コト」に変換してゆくのか。シニアの視点や立場で『モノ→コト変換』する必要がある。

  シニアマーケティング研究室 倉内直也

<シニアマーケティングに関するお問い合わせ>こちらのメールアドレスにお気軽にご連絡下さい。

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