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シニアの旅行でのニーズ(2)「食のバリアフリー」

「美味しいものを少しだけ」

今回はシニアの旅行における食事へのニーズについて考えてみたい。まず、食事の量と質。この歳になると「たくさん」より「美味しいもの」を食べたいと思うようになる。

予約の時点で1泊目以外の宿には「シニアの男性3名で伺うので、料理は量を少なくしてください。おいしいものを少しだけ」と伝えておいた。昼食はその土地の名物を3人の体調に合わせてチョイスということにした。

1泊目:朝食のみ(夕食なし)の長期滞在型の宿。コンドミニアム。
2泊目:有名温泉地、典型的観光旅館、和食(別の客室で部屋食)
3泊目:別荘地の中にあるオーベルジュ。夕食は施設内のレストランで
フランス料理のコース。
4泊目:第3セクター運営の大規模温泉施設にある宿泊棟。大広間で和食
5泊目:有名焼酎メーカー経営の旅館。和風の部屋食。

宿と食事はいろいろなタイプを組み合わせて選んでみた。写真は阿蘇山麓のオーベルジュ

宿と食事はいろいろなタイプを組み合わせて選んでみた。写真は阿蘇山麓のオーベルジュ

1泊目の宿はいわゆる「片泊まり」で夕食なし。朝食は部屋までおかゆ一椀と味噌汁、少しの副菜を運んでくれる。あとはコーヒーというシンプルな内容。胃にもたれず、シニアの旅行中の朝食としては理想に近い。「スマートな朝ごはん」という印象。

座敷机にこぼれんばかりの料理は…

2泊目の宿は「泉質」で選んだので、食事についてはいちばん懸念していた。予想は的中。大きな座敷机にこぼれんばかりの料理が並ぶ。席に着けば全てすでに並べてあり、さめた料理も多かった。

お刺身、天ぷら、茶碗蒸し、お吸い物、…うーん見事な『典型的昭和観光旅館料理』

お刺身、天ぷら、茶碗蒸し、お吸い物、…うーん見事な『典型的昭和観光旅館料理』

贅沢はいわず、おいしくいただいたが何しろ量が多い。3人共かなり残してしまった。朝食も想像通り。かつて旅館はお客が残すくらいたくさん出さないと満足してもらえないという思いがあったようだ。客側も食べきれないほど、というところに満足感や豪華さを覚えた。

しかし、今のシニアには思い切って量を絞り、その分を素材とサービスに当ててもいいのではないかと思う。食べ物を残すことはシニア世代にとって罪悪感を伴うため、食べきれない量は逆にストレスになる。

「こだわり」「気配り」も大切

3泊目のオーベルジュ(郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストラン)は注文通り「美味しいものを少しだけ」だったが、コースになっている分、やや多いかなという印象。しかし、地産のものにこだわったフランス料理はグッドだった。朝食も凝ったもので、こちらもやや食べ過ぎ。

少し

シニアの多くは「美味しいものを少しだけ」食べたいと思っている

4泊目の宿は2泊目の夕食から少し間引いた感じ。その日は九州山地を昼ごはん抜きで走破したのでちょうど良い量。オプションの料理は事前(予約時)に注文しておかないといけないのはちょっと不自由。朝食は適量。

5泊目は最後の締めということでちょっと豪華に。厳選された地のものだけを使った料理が、あと一口食べたい、というぐらいの量で出てきた。名物の「かぼす」は焼酎に絞ったとき、種が入らないように薄いガーゼでひとつずつ包んである。こんな心遣いにシニアはぐっとくる。心にくい工夫だ。朝食は土鍋で炊いたご飯をメインにしたもの。日頃、美味しいご飯を食べたいと思っているシニアが多いのでこれもいいと思う。

その土地、その季節のおいしさを上手く演出すればシニアの心に響く

その土地、その季節のおいしさを上手く演出すればシニアの心に響く

制限食材、服薬による禁忌食品も

食事の量についての注文は伝えたが、それ以上に重要なことがある。それは3人共、消化器や循環器に持病を抱えており、そもそも食べてはいけない、もしくは制限される食品があるということ。加えて、飲んでいる薬による禁忌食品もある。

グレープフルーツは3人共アウト。塩分も制限されている。それとは別で個人的に避けるべき食品もある。あまり細かくいうと、せっかくの旅の楽しみを損なうことになるので、その部分は各個人が自分で判断、対応することにした。

各宿でそれらに対応することは難しいにしても、シニアの客はそのような事情を抱えていることは意識しておく必要はあるだろう。カルシウム拮抗剤系の服薬者として、グレープフルーツのジャムなど素材がわかりにくいものはその旨の表示をして欲しいと思う。

薬の話の続き。3人合わせて飲んでいる薬はゆうに20種類を超える。シニアが3人寄ればそんなものである。しかも飲むタイミングもまちまち。朝起きたら、各食前、食後、食間、決まった時間、寝る前…。どこでも薬をのむため、常に水が不可欠。

薬

飲むのを忘れてはいけないので、ここでも「相互確認」で「薬飲みましたか」と声を掛け合った。

コンビニに何度も立ち寄って水を補給しながら旅を続けた。だから宿に着いて、冷たいペットボトルの水のサービスはうれしい(ただし1人は「冷たい」水がアウト。でもこの頃のコンビニは冷やしていない水も売っている)。

飲むのを忘れてはいけないので、ここでも「相互確認」で「薬飲みましたか」と声を掛け合った。長期の旅行となると薬の紛失に備えて、別のかばんにそれぞれ日数分、分けて収納している。もし薬をなくしたら、その時点でGo Home!

それでも失くす客はないとはいえないので、そんな時、病院や薬局などの医療機関や相談できるところを確保しておけば、何らかの対応が可能になるかもしれない。シニアも「お薬手帳」を持って行くといざというときに役立つかもしれない。最近では電子お薬手帳のサービスも始まっている。

おくすり手帳

持病のあるシニアは念のため「お薬手帳」を携行すべきだろう

求められるシニアの食事への対策、配慮

今後、高齢化の進展で持病のある旅行客の割合がさらに上がることが予想される。すでに国内に糖尿病が強く疑われる人は950万人、可能性を否定できない人を含めると2050万人と推計されている(平成24年:厚労省)。高血圧に至っては約4300万人と推計されている(平成26年:日本高血圧学会)。これは日本人全人口の3人に1人の割合である。病気でなくともシニアには食事の量や塩分、カロリー、脂肪分など気がかりなことが多い。

厚生労働省:平成25年国民健康・栄養調査報告より

厚生労働省:平成25年国民健康・栄養調査報告より

さらに医療や介護システムの進歩で、これまで旅行が難しかった何らかの障害を抱えるシニアが旅行を再び楽しめるようになるだろう。海外からの医療ツーリズムも話題に上がってきた。そのような中で健康に問題を抱えているシニアの旅行客について、食事の栄養管理体制をはじめとした対策、配慮をした宿が注目を浴びるに違いない。

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也