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室長の小部屋

自動運転に「レガシー運転モード」を

 今、自動運転技術がさまざまな面で話題になっている。最も近い将来に起こる、画期的技術革新、いや、もっと次元の高い社会システムの革新になることは間違いない。20世紀が産んだ最大の革新がインターネットだとすれば、21世紀の最大の革新は自動運転技術といわれるかもしれない。自動運転技術を制したものが次世代産業の覇者になるともいわれ、自動車メーカーにIT企業も巻き込んでその開発に鎬を削っている。

 https://www.toyota.co.jp/jpn/tech/automated_driving/
 トヨタの自動運転に関するコンテンツ
 http://www2.nissan.co.jp/AUTONOMOUSDRIVE/
 日産の自動運転に関するコンテンツ
 http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_1003.html
 「自動運転革命 グーグルの脅威」」NHK NEWS WEB – NHKオンライン

 高齢者にとっても自動運転技術は大きなインパクトを持つ。なぜなら自動運転は現在、大きな社会問題になっている高齢者のモビリティを解決する強力な手段になるからだ。

 年をとると運転するのが不安になる。私もその一人。視力の衰えからか、周りが見にくく夕方や夜の運転が怖い。視野も狭くなっているように思う。道路の端を歩いている歩行者にヒヤッとしたことは一度や二度ではない。近々ではないにしても、いつか免許を返納しなければならない日がくる。

 高齢者のモビリティの問題は超高齢化社会に突入する日本の国家的課題である。

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 ボランティアで中山間地のまちづくり(活性化)のお手伝いをしているが、都市部からそれほど遠くない中山間地でさえ公共交通が次々に撤退しているのが現状だ。住民は買い物に行くにも、病院に通うにも、自動車が必要になる。そうなるとまず影響を受けるのは車の運転ができない学齢期の子どもたちと高齢者。子どものいる家庭は都市部に移住し、地域はますます限界集落に近づいていく。高齢者はやむなくハンドルを握り続けるか(92歳で原付きバイクに乗るおばちゃんさえいる)、学校の行き帰りに合わせて、一日に二往復の自治会運営のバスを利用しかない。

 そんな現状で自動運転技術が実用化され、過疎地や中山間地で高齢者や子どもたちが気軽に移動できるようになれば、高齢者のモビリティにとどまらず、過疎地の活性化、再生にもつながる。

 一方、それだけ社会にインパクトを与えるということは多くの課題も解決しなければならない。技術はもちろん、インフラ、法整備から経済、雇用といった社会問題にも及ぶだろう。その議論は多くの専門家が研究されているので、ここではおく。

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 いわれているように自動運転技術が高齢者に多くの便益をもたらすことは間違いない。しかし私が危惧することは自動運転技術が高齢者にとって自分たちのものとして使いこなせるかどうかという点である。自動運転への指示をスマホやカーナビでしかできない、というようなことになったら高齢者は途方にくれるしかない。

 テレビや企業のWEBサイトで紹介される自動運転技術の開発現場に高齢者の姿はない。最先端技術に通じた若くて優秀なエンジニアが最新のテクノロジーを活用して開発を続けているのだろう。それはそれで素晴らしいことだ。高齢者への配慮もこれからの実証実験でなされていくのであろう。しかし開発の基本的な部分で高齢者への配慮をお願いしたい。

 自動運転技術の紹介映像ではハンドルがすっと引っ込み、運転者はスマホを触ったり、ビデオ映像や仲間たちとの会話を楽しんだりしているものが多い。これが高齢者の場合であればどうだろう。どうやって行き先を指示するのか。音声ならありがたいが、スマホやカーナビレベルなら厳しい。高級車に載っている私の友人は付属している最上クラスのカーナビ(昔のテレビ画面くらいあるのに!)を全く使っていない。

 そこで提案だが、高齢者のための自動運転技術に、今流行りの「レガシー」を取り入れてはどうだろうか。

 自動車はその原型が非常によくできていたので基本構造が1890年頃から現在まで130年近く変わっていない。4つの車輪、ハンドル操作、アクセルとブレーキ…。そのせいで運転方法も基本的には同じである。普通の人が世界中、どこに行ってもどんなメーカーの車も運転できてしまう。これは実はすごいことだと思う。この偉大な「レガシー」を自動運転のHMI(Human Machine Interface)に取り入れてはどうだろうか。

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若い世代はゲーム機のコントローラーやスマホ感覚がお好みかもしれないが、高齢者のために「レガシー運転モード」をぜひ残していただきたい

 高齢者も自動運転で運んでもらえたらうれしい。タクシーに乗っている感覚。ありがたい。だから公共交通機関に代わるものは「自動走行システム」がいい。

 しかし、単に乗せてもらうだけではなく自分で運転して、行きたいときに、自分の行きたいところに移動できる自由は欠かせない。だから「レガシーモード」では自分でハンドルを握り、アクセルを踏み、ブレーキも使いながら思うところに行ける。その裏側で車は自動運転されており、ドライバーが歩行者に気付かなければ自動的に減速や停止し、カーブはきれいにトレースして走ってくれる。衰えた脳や身体がアクセルとブレーキの踏み間違えても安全に目的地に到着できる。遊園地のテールの上を走る幼児向けの乗り物とは違う高度な「運転支援システム」が必要だ。

 高齢者にとって自動運転車はロボットが運転する「護送車」ではなく、「自」らが「動」くための「車」になれば、それによってもたらされるモビリティによって高齢者のQOLが大きくが向上するはずである。
 高齢者の運転免許返納をどう進めるかが議論されている。高齢者から車のキーを取り上げるのではなく、再び高齢者に車のキーを渡せるように、自動運転技術の速やかな開発を望んでやまない。

※「自動運転」がどこまでの機能を指すかについては多くの解釈があり、統一されているわけではない。ただ、ここでは技術的な問題として取り上げるのではないので高齢者が安全に目的地に移動できることを「自動運転」とする。
詳しくは
『首相官邸ホームページ 官民 ITS 構想・ロードマップ 2016資料』を参照されたい。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20160520/2016_roadmap.pdf

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也

<シニアマーケティングに関するお問い合わせ>こちらのメールアドレスにお気軽にご連絡下さい。

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