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ロボット介護機器に「理解不足」というハードル(上)

IT技術を含むロボット技術を通じて老後のQOL(生活の質)向上を目指す動きが活性化してきている。介護事業者、介護用品メーカーだけではなく、ハウスメーカーなど異業種からの事業参入や、専門メーカー同士のコラボレーションによるシステム構築など、大きな事業分野に成長しそうな萌芽もマスコミ等でよく見かけられるようになった。
(「室長の小部屋 シニアの介護にIT技術の大きな可能性」https://www.nspc.jp/senior/archives/3660/参照)

それら所謂「ロボット介護機器」について、一般の人々の認識はどうなのだろうか?
東京都福祉保健局では、平成28年10月、「高齢者対策に関する都民意識調査」の調査結果をリリースした。その中には、「ロボット介護機器の利用意向」及び「利用したくない理由」を問う設問も設けられており、興味深い。
また、「ロボット介護機器」と一括りにせず、「移乗介助用機器」・「移動支援用機器」・「見守り用機器」・「コミュニケーションロボット」と具体的な像を結びやすいように設問設計されている。
対象は20歳以上65歳未満の都民。年代別に異なる傾向も窺え、市場開発の上での課題も垣間見えてきた。
本アーティクルでは、2回に分けて、調査の一部をご紹介する。

図1.は、ロボット介護機器のタイプ別の利用意向を全母数を通して見たもの。
全体の傾向として、「移乗介助用機器」・「移動支援用機器」・「見守り用機器」の利用意向はおしなべて高く、概ね70~80%近くの方が、「利用したい」という意向を示している。中でも、見守り機器への利用意向は最も高くなっている。

上記3タイプとまったく異なる傾向を示したのが、「コミュニケーションロボット」。「利用したい」は、全体の半数にも満たず、利用したくない、わからないと答えた方は過半数を超えている。「コミュニケーションロボット」は、施設系を中心に利用が広がりつつあることも手伝って、一般市民にとっては具体的なイメージを描きづらいこともあるだろう。

次に、4タイプそれぞれの年代別利用意向を見て行こう。(下記、図2.~図5.)

大雑把に総括すると、30代~50代にかけて、利用意向が高まり、60代で最も低くなっている傾向にある。
この結果をどう見るか、より深い検討が必要ではあるが、一つには、介護の問題がより現実味を帯びてくる年代にあって、安易に「利用したい」と答えることを憚った結果とも考えられる。
尚、60代の「利用したくない」とする回答は、他年代と比較して決して高いわけではない。「わからない」という態度保留の回答が他年代より際立って多いことに注目すれば、ロボット介護機器の情報そのものが60代に不足しているのか、あるいは「わかる」ことのハードルを他年代より高めに設定しているのかもしれない。

年代別傾向を見ても、「コミュニケーションロボット」が得意な傾向を示している。
「利用したい」という回答に、年代間でそれほど顕著な差が認められないことだ。全年代を通じて他の3タイプより、「利用したい」という意向は少ないが、60代のみに留まることではないということだ。

このような傾向について、ニッセイ基礎研究所ではレポートの中で、以下のような背景があると推察している。
1.活用目的が他の3タイプのように明確ではない
2.現物に触れた経験がない限り、「癒し」などの効果の実感は不可能
つまりは、理解不足、情報不足に尽きるということでもある。(下に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男