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「ダブルケア」視点で変わる、「ケアの社会化」(上)

「ダブルケア」という概念をご存じだろうか? まだまだ耳慣れない言葉だが、親の介護と育児の両立が求められる状況を意味している。一昨年あたりから政府の政策課題として注目を集め始めた。

この「ダブルケア」の人が、増えてきていると言う。晩婚化による出産年齢の高齢化に依るものだ。とは言え、介護と子育ての両立に直面する状況は従来から存在した。多くの場合女性がその担い手だったわけだが、兄弟や親戚が多く、そのネットワークも強靭だったひと昔前とは様相は異なってきている。リスク分散が思うに任せなくなっているわけだ。
加えて、働く女性が大幅に増えている情況で、育児・介護・仕事の三者の鼎立が渇望されている。そうなれば、子育ては子育て、介護は介護といった別々の枠組みでの「ケアの社会化」は早晩限界が訪れるとも思える。

内閣府では、平成27年度、「ダブルケア」の実態把握のための大がかりな調査を実施した。(発表は平成28年3月)その結果のほんの一部を2回に分けてご紹介しようと思う。1回目は、「ダブルケア」に直面している人口や年齢層などの基礎データ、2回目はダブルケアの人の意識や要望を披瀝する。

「ダブルケア」の状況にある人は全国で約25.3万人(図1.)15歳以上人口(1億1,081.5万人)の中で0.2%を占めるに過ぎない。育児・介護に関する研究はそれぞれ蓄積が進んでいるが、両方を同時に担う「ダブルケア」の実態が明らかにされなかったのものも「まだまだ限定的」という印象が強かったからだろう。(とは言っても、約25.3万人という数字は、乳がん患者数の約2.8倍に相当する。決して看過すべき数字ではない。)

育児者、介護者をそれぞれ分母に置いた数字は、全育児者の中での「ダブルケア」の人は、2.5%。全介護者の中では4.5%に上る。(以上、図2.)

「ダブルケア」に直面している人は、30代後半・40代前半で全体の過半数を占めている。とくに女性は両者計で55.3%とその傾向が強い。つまり「アラフォー」、団塊ジュニアの女性が「ダブルケア」の代表的な担い手になっているのだ。
この世代は、「夫が働き、妻が家にいる」型から「共働き」型への移行期を過ごしてきた。図4.は必ずしも30代後半・40代前半に限った話ではないが、就業している「ダブルケア」の人は全体の3分の2に上る。

「ダブルケア」の育児面に関してその年齢や就学状況を見たのが図5.。男女で顕著な差はないが、女性では就学前の未就学児が全体の3分の2を占めている。その中でも3歳未満の乳幼児の割合が最も高くなっている。

図6.は、「ダブルケア」の人の子育て、介護対象者の続柄を見たもの。代表的なパターンは、「自分の子の子育てと親の介護」であり、全体の3分の2を占めている。しかし、「自分の子の子育て、祖父母の介護」や「孫の子育て、親の介護」というパターンも無視できないパーセンテージで存在している。

超高齢社会であること、世帯構成が多様になってきたことから、等しく「ダブルケア」と言っても、抱えている悩みも、要望も多様化していると推察される。(下に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男

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