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室長の小部屋

シニアの集客、パートナーに注目  オンワード樫山 『23区HOMME』―シニアマーケティング成功事例 (2)

 シニアをどのように集客するか。それにはいろいろな方法がある。これから紹介するオンワード樫山(以下オンワード)の『23区 HOMME』のはその巧みな一例であろう。応用範囲が広いと考えられるので取り上げてみたい。「男性シニア層を捉えたいけれど、どうしたらいいかよくわからない、どうも上手くゆかない」という向きには参考になるかも。

 シニアの男性というのは、消費者としては最低と言われている(失礼!)。中でも企業を定年でリタイアした男性諸氏はアカンのだそうだ。「購買」はできても、「買い物」ができない。

  1)ものの値頃感がわからない(結婚してから買い物はカミさんに任せっ  きり)
  2)変な面子やこだわりがあり正しい判断がくだせない(ブランドやスペ  ックに固執したりする)
  3)みんなで決める会社時代のやり方が抜けず、ひとりで決断できない
  4)トレンドや流行に疎い
  5)目的が曖昧なため、的はずれなものや余計なものを買う

とその理由は枚挙にいとまがない。中でもファッション(衣類)となると絶望的である。もちろん、若い頃から着るものは自分で選ぶという人もなくはないが、少数派である。スーツという制服に守られていたので、さて、会社から開放されると(投げ出されると)なにを着たらよいかわからない。仕事以外の外出着といえばゴルフウェア、ということになる。でなければスポーツブランドがせいぜい。ユニクロもあるが、なかなかTVコマーシャルのようには着こなせない。下手に着ると貧乏臭い。

 しかしシニアの男性でも、旅行や同窓会、友人の個展のパーティなど、着飾る程にはないにしてもそれなりの格好で出かけたいときはある。そんな時、誰だって「ダサい」と言われるより「格好いい」とか「おしゃれ」と言われたい。これに年齢・男女の区別はない。
 そんな買い物下手のシニアに着目したの(だろう)が、上記のオンワードである。では、どうやって男性シニアにちょっとおしゃれな(=ほんの少し値の張る)服を売ればよいのだろう。

 オンワードといえばレディースはもちろんだがメンズの有名なファッションブランドを抱えている。J.プレス、カルバン クライン…これらは先ほどの若い頃から着るものを自分で選ぶ人のブランドである。注目したいのはレディースの基幹ブランドのひとつ、『23区』から派生した『23区 HOMME』 。

 私もその愛用者だが、売り場で若い男性をあまり見かけない(たまたまかもしれないが)。デパートの売り場ということもあろうが、たいていは中年以上のカップル(=夫婦)である。なぜ、『23区』で「HOMME」なのか。自分が買っている服や出会った客から考えてなるほどと気がついた。

 そこにはシニア夫婦の奥さんにダンナを連れてこさせる戦略が見えてくる。『23区』は1999年に、東京で働く女性のベイシックファッションというコンセプトでスタートしている。最初のイメージガールは29歳の中山美穂。その当時、『23区』のファンだった女性たちは今、何歳になっているだろうか。ちょっと大人のファッションだったとして30歳なら今、44歳。でも、もっと年齢の高い女性客もいたはず。

 そうした女性たち、つまりかつて『23区』の服を着ていた、もしくはお気に入りの一つだった女性たちがシニアの夫の服装を何とかすべく、自分がかつて親しんだブランド『23区』の男性版の売り場に夫を誘導しているのではないか、というのが私の仮説である。ちなみに私のカミさんは還暦を超えてもデパートの『23区』の売り場に立ち寄っているらしい。

 私の愛用する『23区 HOMME』のショップはデパート紳士ものフロアのエスカレーター近くにある。買い物に来た女性客が気付きやすい場所だ。親しんだ『23区』ブランドの男物があるのか…、ちょっと覗いてみよう→意外に落ち着いて上品、オシャレ感もある→ダンナを連れてきてみようか、という構図になっているのではないか。

 もちろん、それだけではダメで、品物、品揃えがしっかりしている必要があるのは言うまでもない。その点を『23区 HOMME』はクリアしているように思う(だから私も買っている)。

  1)品質はしっかり。本人だけではなく、妻や娘の厳しい目に叶うもの
  2)派手ではないが、おしゃれなデザインやカラー
  3)太めのサイズ(でも、細身に見える工夫は必要)も必要
  4)トレンドはしっかり取り入れる
  5)リピート購入につながる機能性(ちょっとした心配り)
  6)女性に嬉しい「おまけ」(サプライズ)つき

という具合である。ちなみにウェストサイズはパンツの場合、92センチまである(品番によるだろうが)。オーバー85のメタボ体型でもOKである。

「Mobile Pocket」と名付けられた携帯やスマホをサッと取り出せるサブポケット。腰掛けても落ちないように深さと角度も考えられている

「Mobile Pocket」と名付けられた携帯やスマホをサッと取り出せるサブポケット。腰掛けても落ちないように深さと角度も考えられている

 仮に、オンワードが男性シニアブランドを立ちあげて店舗をデパートに展開しても、なかなか集客は難しい。同じような品揃えにしても、カミさんたちは「シニアの連れ添い」ということを拒否することが考えられるからだ。旦那のファッションは「他人ゴト」でありながら実は「自分ゴト」でもあるからだ。

 シニアへのアプローチはさまざまあるが、シニア男性にアプローチする方法としてパートナーと併せて考えることも重要であろう。その一つとして私は『23区 HOMME』に注目している。「将を射んとせば先ず馬を射よ」であるが、どちらが将で、どちらが馬であるかはわからない。

   倉内直也

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