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ひとり暮しvs夫婦のみ、生活実態に違いは?(上)

全国全世帯のうち、高齢者のいる世帯は約47%。うち、過半数の58%が「夫婦のみ+ひとり暮し世帯」で占められている。(2015年の数字。出典は2017年版「高齢社会白書」) 大雑把に言って、全国全世帯の27%が高齢者を含む夫婦のみ、もしくは高齢者ひとり暮し世帯という計算になる。
ほんの20年前の1995年、高齢者のいる世帯は全体の31%。その中で「夫婦のみ+ひとり暮し世帯」が占める割合は、約42%だった。高齢者を含む夫婦のみ、もしくはひとり暮し世帯が全国全世帯に占める割合はわずか13%に過ぎなかった。この20年間にその比率は倍加し、非常に大きなプレゼンスを示すことになったのだ。それに反比例して、子と同居する高齢者は減少の一途を辿り、高齢世帯の「個化」は留まるところを知らない。

このような文脈の中で一括りにされることも多い、「夫婦のみ世帯」と「ひとり暮し世帯」ではあるが、両者に際立った意識の違いはないのだろうか? 「データの小窓」では以前に「高齢おひとりさま」の生活満足度等の生活意識を取り上げたこともある。そこでは、生活に満足し、ゆとりこそないものの格段の経済的心配もない、比較的ポジティブなシニア像が浮かび上がってきた。果たしてそれは虚像なのか?

今回は、東京都保健福祉局による都民対象の調査データから、「夫婦のみ世帯」と「ひとり暮し世帯」の比較を軸に、健康・就業・住居・外出頻度など、客観データを中心に考察してゆきたい。

図1.は健康状態に対する意識に関しての質問。
高齢者全体では、45.5%の方が、「健康状態がよい」(よい、まあよいの合計)と回答しているが、「ひとり暮らし」は全体平均を下回り、「夫婦のみ」ではそれを上回る結果が出た。「夫婦のみ」と「ひとり暮し」の差は10%近くに上る。
「健康状態がよくない」(よくない、あまりよくないの合計)の両者の差は、「よい」ほど開きがないが、それでも「ひとり暮し」が「夫婦のみ」を6.6%上回り、全体平均を上回る結果になっている。
「健康や病気のこと」に不安を覚える単身高齢者は、2002年は82.5%、2014年には58.9%(※)。時系列で見れば、確かに大幅に低下しているものの、「ひとり暮らし」は「夫婦のみ」に比べて、健康面でのハンデをより多く負っていることは否めない。
(※内閣府 一人暮らし高齢者に関する意識調査)

図2.は要介護等認定者数を「全数」「ひとり暮し」「夫婦のみ」で比較したもの。ここでも「ひとり暮し」の認定者率が際立って高く、17%(全国平均は約18%、東京都23区は約17%)。
ここで目立つのは「夫婦のみ」のせたい。要介護等認定者の高齢者に占める割合は、10%を切る「健全な(?)」数字になっている。このデータを見る限り、「夫婦二人で東京に住む高齢者」の要介護リスクは非常に低い。

健康面、介護面とは裏腹に、両者の間で顕著な差が見られなかったのが「就業」(図3.)。
「全数」「ひとり暮し」「夫婦のみ」、それぞれ拮抗した数字になった。あえて健康面、介護面との違いを探せば、「夫婦のみ」「ひとり暮し」ともに、全数を下回っていることぐらい。
僅差とはいえ、3つの比較ジャンルの中では「ひとり暮し」の就業率は最も低い。(続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男