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「中食」を上手に使いこなす、シニアの食卓(中)

(上から続く)
では、具体的に調理(済み)商品の購入理由を見てゆこう。2016年11月に実施された「食育に関する意識調査」(農林水産省)を出典に拠った。同調査では、9つの選択肢を準備している。同省の「平成28年度 食料・農業・農村白書」では、そのうち上位7項目をグラフ化して紹介している。本アーティクルもそれに倣い、上位7項目の結果を取り上げた。

図5.は、「作る手間が省ける」ことを購入理由に挙げた割合。調理(済み)商品の購入理由として、真っ先に思い浮かぶ、王道を行く回答だろう。9つの選択肢の中で最も多く支持を得た理由だ。
ただ、複数回答であることを考慮に入れれば、王道の理由であるにもかかわらず、その支持は意外に低いと筆者個人的には感じている。

最もスコアが高かったのが、20~30歳代の女性で、67%、ついで同じく20~30歳代女性が続く。年齢層が低くなるほど、スコアは高く、若い世代の楽ちん志向が明らかになった。
最も低いのは40~50歳代の女性で50%を割り込んでいる。一見、手間を惜しまない勤勉世代のようにも見えるが、どうもそうではならしい。(そのわけは後の方で。)

図6.は、「自分が作れないものが食べられる」ことを購入理由に挙げた割合。
「作る手間が省ける」とは異なり、調理(済み)食品そのものを積極的に評価したポジティブな理由と言えよう。

男女とも年齢層が上がるほど、スコアは高くなる。「マイナスを補う」だけに留まらない評価は、年齢を重ねるほど高くなっている。男性と女性の比較では、各年齢層、概ね女性の方が10ポイント内外スコアが高い。

最も高い評価を得たのは、60歳以上の女性。4割もの方が購入理由に挙げておられる。「手間が省ける」上に、「新しい食体験」ができることが、シニア女性の幅広い支持を集めているのだろう。
もちろん、近年の調理(済み)食品の品揃えの豊かさと食品の質の向上も与っているだろうことは想像に難くない。

図7.は、「調理する時間がない」ことを購入理由に挙げた割合。この選択肢は切実だ。「作る手間が省ける」といった生易しい理由ではなく、物理的な時間不足に追われる悲鳴まで聞こえてきそうな理由である。

この選択肢にハイスコアで答えたのが、20~30歳代、40~50歳代の女性。ことに、40~50歳代の女性は6割もの高率に上る。「作る手間を省ける」の47%をも大きく上回っている。この世代で「作る手間が省ける」回答が意外に低い点を指摘した。その理由は「手間を惜しまない」からではなく、超多忙である現実が、グラフの「行間」から垣間見えている。

シニア世代ではさすがに「時間がない」ことを理由に購入する方は他の年齢層よりは少ないが、それでも男女とも25%内外と一定の支持を集めている。やはり、調理(済み)食品のレゾンデートルに近しい選択肢には一定の支持率がある。

図8.は、「少量で買える」ことを購入理由に挙げた割合。
想像通りシニア層の支持が他の年齢層より高い。25%内外と一定の支持を得ている。

シニア層に向けた商品開発の賜物でもあろうが、今後人生100年時代を迎え、この「少量ニーズ」は高まりこそすれ、衰えることはまずないだろう。(下に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男