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文化芸術体験、70歳以上は「鑑賞」より「活動」(上)

音楽、美術、文化財などの文化芸術を鑑賞したり、自身がプレイヤーとして取り組む活動は、一般的にはシニア世代と親和性の高い余暇としてイメージされると思うが、実際はどうなのだろうか? 2016年内閣府による「文化に関する世論調査」では、直近1年間のさまざまな文化芸術の鑑賞経験、活動体験の有無を年齢階級ごとに明らかにしている。個別のデータをつぶさに紹介しながら、シニア世代と文化芸術の関わりを追いかけてみたい。

過去1年の間に「音楽、美術、文化財などを鑑賞した」人は、全体では59.2%(2009年の調査比-3.6%)。文化庁が掲げている80%には遥かに及んでいない。
年齢階級別にみれば、20~29歳の年齢階級で75.4%と、文化庁の方針に近いところに迫っているが、それ以上の年代になると概ね、年齢階級とともに鑑賞者の割合は低くなる傾向にある。ことに70歳以上での落ち込みが甚だしい。(図1.)
この傾向は、どんな文化芸術でも同様なのだろうか?

図2.は映画(アニメを除く)の鑑賞体験に絞ったもの。映画の鑑賞体験率は20~59歳の年齢階級で総じて高い。対して、60歳以上のシニア世代で急激に低下している。ことに70歳以上では低く、わずかに12.8%に留まっている。

映画に比して音楽鑑賞の体験はどの年齢階級も似たような体験率になった。(図3.)わずかに20~29歳の年齢階級で体験率が高く、30~39歳で低くなっているが、顕著な傾向とは言えない。
ただ、20歳代が年齢階級間で1位とはいっても、その数字は27.6%と映画の体験者の半分にも満たない。逆に70歳以上では24.2%と比較的低い数字ながら、それでも映画の体験者の2倍近い数字をキープしている。

図4.と図5.はそれぞれ美術(絵画・陶芸・書など)と歴史的な建物や遺跡の鑑賞率。双方とも50~69歳といった中高年層に鑑賞者が多い。
70歳以上の層では、美術鑑賞では20.8%とそれなりの鑑賞者が居るが、歴史的な建物や遺跡となると、13.1%にとどまり、60歳代から一気にすとんと落ち込んだ格好になっている。屋外が多いこと、必ずしも便利なところにあるとは限らないことなどから、肉体的にもハードルが高くなってきているのかもしれない。

60歳を境目に傾向が大きく異なるのが、演劇の体験率。(図6.)50歳代が11.7%と全年齢階級でトップだが、60歳代になると6.6%と落ち込んでくる。70歳以上になってやや盛り返しはするものの7.3%どまりであり、59歳以下のほどの高まりは認められない。

この傾向は舞踊になると一変する。(図7.)49歳以下の若い方の年齢階級で概ね低く、50歳を超えるとその率は上昇をはじめ、70歳以上の年齢階級でピークに達している。その数字は7.9%と低いが、音楽や美術など、比較的ポピュラーに鑑賞できるものに比べ、舞踊は失礼ながらそこまでメジャーだとは言いにくい。そのジャンルで、70歳以上では、100人のうち約8人が過去1年間に鑑賞したというのは、大きな数字と言ってよいだろう。(中に続く)

株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男