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室長の小部屋

シニアの「学び」好き ―「学び」の意欲をマーケティングに取り込む

 これまでもシニアの「学び」好きは指摘されてきた。総務省が行っている調査によると、仕事や学業を除く「学習・自己啓発・訓練」をした人の数が5年前に比べ、若い世代が全般に低下している中で50歳以上は増加している。
 中でも著しく伸びているのが70歳代である。団塊世代が65歳を超え、本格的にリタイアするこれからは一層その傾向に拍車がかかる(図1)。

(図1)この1年に「学習・自己啓発・訓練」をした人の数

 出典:総務省 平成23年社会生活基本調査

出典:総務省 平成23年社会生活基本調査


「R.E.Peterson の“education-more-education”(教育を受けた者ほど学びたがる)」という法則がある。
 団塊世代の高等教育機関進学率は男女合わせ全体で20.0%(昭和39年)。戦前世代10.1%(昭和30年)からは大きく上昇して5人に1人が進学するとい、高等教育が身近になった最初の世代でもある(図2)。

(図2)高等教育機関への進学率

出典:文部科学省統計要覧(平成26年版)グラフは同資料をもとに独自作成

出典:文部科学省統計要覧(平成26年版)

 シニアの「学び」好きは他の数字にも現れている。大学通信教育の年齢別学生数で見ると、60歳以上の学生数は平成13年には8372人、全体の4.6%だったものが10年後の平成23年には18583人、占める割合は10.7%、約2.2倍と増え続けている(文部科学省「大学通信教育基礎資料集」平成23年より)。

(図3)大学通信教育年齢別学生数の推移(平成13年/23年比較)

出典:文部科学省「大学通信教育基礎資料集」(平成23年)グラフは同資料をもとに独自作成

出典:文部科学省「大学通信教育基礎資料集」(平成23年)

 「放送大学」では学ぶ学生の21%が60歳以上、90代の人もいるという(図4)。その目的は「もう一度、勉強し直すため」が57%、「教養を深めるため」が25%、「学ぶこと自体を楽しむため」が10%と続いている。前記はいずれも学位取得のための通信教育でかなりハードルが高い。パソコンや俳句などの趣味の通信教育などを入れると、もっと大きな数になるだろう(図5)。

(図4)放送大学年代別入学者比率

出典:「教養学部平成23年度」(平成23年)

出典:「教養学部平成23年度」(放送大学ホームページより)

(図5)シニア世代の放送大学入学目的

出典:「教養学部平成23年度」(放送大学ホームページより)

出典:「教養学部平成23年度」(放送大学ホームページより)

 私も2年前からある資格講座に通っている。目指す資格は今のビジネスとは全く関わりのない公益性の高い分野のものである。今年から実践コースに入り、同じ講座の受講生3名とフィールドワークを中心にしたグループワークを行っている。そのメンバー4人の年齢を足すと260歳以上。平均年令は65歳を超える。私以外のメンバーはそれぞれが全く違う分野で活躍してきた団塊の世代である。
 メンバーが異口同音に語るのは「学生のときより、よく勉強しているなあ」ということである。若い受講生からは「ジイさんたちは時間がたっぷりあるから」と言われているが、それは正鵠を射ていない。それぞれに自分の分野でまだまだ活躍中で、忙しいということでは若い受講生とあまり変わらない。
 ではなぜ「シニアはよく学べるのか」。グループワークを進めていて感じることが3つある。

1)段取りが良い
2)人の話をよく聞く
3)ネットワークの厚み

である。
 1)の段取りが良いのは長い社会人経験から、各人の仕事の仕方が洗練されていて無駄が少ない。基礎ができている。他のメンバーから「こんな方法もあるのか」と教えられることも多い。
 2)人の話をよく聞くようになる。このことは社会経験を重ねると、だれでも感じることであろう。自己主張をやめるということではない。「摺り合わせが上手い」ということだ。一つの目的を達成するために周りと上手くやって成果を出す調整能力もシニアは高い。
 3)ネットワークの厚み。これは個人差が大きいかもしれないが、やはり長い経験の中での人脈やさまざまな組織との関わりがネットワークを広げる。それぞれのネットワークを活かすことで解決の糸口が簡単に見つかることもある。

 つまりシニアは「学び」が好きなだけでなく「学び」が得意なのだ。確かに物覚えが悪くなり、小さい字も読みにくい。根気も続かない…それでも「学び」が好きなのはシニアになって「学び」が「しなければならないこと」から「したいこと」に変わったからである。

 講座の仲間で最近「プロボノ(Pro bono)」ということがよく話題にのぼる。プロボノとはラテン語で「公共善のために」を意味するpro bono publicoの略とのことで、ひとことで言うと「職能を生かすボランティア」ということになる。
プロボノはシニアと言うより現役世代の専門家のボランティアから出た考え方だが、シニアであれば専門性だけではなく、先に挙げたような理由で活躍の場は更に広がるだろう。また、これまでの経験や職能に磨きをかけてさらにスキルアップを図るシニアも少なくない。

 一方、これまでの専門や職能や全く違う分野について学びたいというシニアも多い。先の放送大学のデータに見える「教養を深めたい」という層である。
 奈良大学(私立)の通信教育部の文学部文化財歴史学科は、そうしたこれまで興味を持っていたが仕事や家庭のことで歴史の勉強ができなかったシニアが多く学んでいる。医師、弁護士なども在学するという。

 もともと通信教育部は平成17年に18歳人口の激減と団塊世代のリタイアを考えての設置であるためシニア世代にアピールする内容がシラバスに盛り込まれている。単に歴史をテキストで学ぶだけでなく、奈良を中心した遺跡、社寺などで現地授業が行われているのも全国のシニアを惹きつけている要因の一つであろう。博物館学芸員の資格をとれるのも勉強の励みになる(実際、学芸員になるかは別にして)。
 WEBサイトに掲載されている学生・卒業生からの「学ぶ喜び」の声は、多くはシニアのものだ。こうしたシニアの「学び」への意欲をマーケティングに取り込みたい。

 「学び」好きはシニアマーケティングで忘れてはならないことの一つである。シニアに向けたマーケティングプランに「学び」の切り口をプラスしよう。
 教育関連はもちろんのこと、旅行なら歴史や文化の「学び」を入れる(負担にならない程度に)、温泉地にある宿泊施設なら「知ればもっと効いて気持ちいい『温泉大学』」もいいかもしれない。「演芸ショー」より、今のシニアには喜ばれるはず。調理家電なら本格的なクックブックを付けてプロ並みの料理が「学べる」ようにしてはどうだろうか。少子化で悩む自動車教習所なら「脳科学者が教える70歳からの安全運転」と言うようなカリキュラムでこれからも運転を続けなくてはならないシニアに学んでもらうコースもいいかもしれない。
 「学び」はシニアの心身と生活を活性化させる。シニアに喜んでもらえて製品やサービスが受け入れてもらえるなら、願ったり叶ったりである。

日本SPセンターシニアマーケティング室 室長 倉内直也

<シニアマーケティングに関するお問い合わせ>こちらのメールアドレスにお気軽にご連絡下さい。

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