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都市部で急増! 2025年「食料品アクセス問題」人口

「買い物難民」「買い物弱者」という言葉が、マスコミ紙上に現れて久しい。一言で言えば文字通り「買い物が困難な一般市民」のことで、具体的には、「店舗まで500m以上で自動車を持たない65歳以上の高齢者」と説明されている。この問題は山間部や離島だけではなく、昭和40年代以降都市郊外に建設されたニュータウンでも起こっている。

買い物の中でも、特に食料品が問題で、農林水産省では「食料品アクセス問題」と命名し、「食料品のアクセスに制約があると、高齢者の健康(自立度)に影響するとされる食品摂取の多様性が低くなる可能性がある」(※1)と警鐘を鳴らしている。(※1.2014年10月 農林水産政策研究書「食料品アクセス問題と高齢者の健康(報告要旨)」)「食品摂取の多様性が高いほど、知的能動性と社会的役割の低下リスクが低い」ことが研究の結果明らかになってきたらしい。

本稿では次稿と2回にわたり、今後の食料費支出の推計動向や「アクセス問題」の人口推計、農林水産省が市町村対象にした「食料品アクセス問題」に関するアンケート調査の結果をご紹介しよう。

図1

図1.は2035年までの、全食料費支出に占める高齢者及び単身者の割合を推定したもの。世帯主65歳以上の世帯が占める食料費は、2035年には40%を超えると予測されている。これは2010年当時の実績値を10%以上上回る大きな伸び。「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」による2035年の高齢化率、33.4%を上回る数字である。

図2

角度を変えて、食料費の支出の内訳を見てみよう。図2.は生鮮食品、加工食品それぞれが食料支出全体に占める割合の変化を推定したもの。(対象は全世帯)
生鮮食品漸減、加工食品漸増の長期傾向は、1990年代からすでに明らかだが、このいわゆる「食の外部化」傾向は今後も変わることなく、両者にはじわじわと差がついてくる。2035年には、加工食品:生鮮食品=3:1のトリプルスコアで加工食品が生鮮商品を凌駕すると見られている。

図3

図3.は「買い物に苦労している」人口の実績値と2025年の推定値。生鮮食料品販売店舗への「アクセス問題」抱えている人は、2025年には600万人近くに上る。食品スーパー等への「アクセス問題」を抱える人は800万人を超える。
この増加傾向は特に都市部で顕著で、ことに都市部における生鮮食品販売店舗への「アクセス」では、2010年比2025年推計が2倍近くの伸びになっている。

このような、「アクセス問題」を抱えている人口の増加が加工食品の消費比率の伸びの一因となっていることは想像に難くない。加工食品は便利で、最近は味覚の点からもレベルの高いものが多いが、それでも過度な依存は食品摂取の多様性を妨げてしまう可能性も高い。そして「アクセス問題」を抱えている人ほど、加工食品の調理に頼りがちになるのは自明の理である。

当然、「アクセス問題」については、各自治体で検討・対策がなされている。次回のコラムでは、そのあたりの事情をみてゆくことにしたい。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男