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地方移住はシニアの「夢」か?(下)

日本版CCRC構想の今一つの大きな目的は、「東京圏の高齢化問題への対応」にある。

埼玉・千葉・神奈川・東京の4都県では、今後急速に高齢化が進む。とくに75歳以上の後期高齢者は、2025年までに約175万人増加すると見込まれている。(「日本の地域別将来人口推計 平成25年3月推計」)

図6

図6.は東京圏4都県と全国の75歳以上人口を2015年を100として指数換算したもの。
2025年に向けて後期高齢者の人口は急激に増加し、埼玉・千葉の両県では、2015年の150%超になると推計されている。
東京都こそ、全国平均とほぼ同調した傾向を示しているが、埼玉・千葉・神奈川の3県の増加率は全国平均を大きく上回る。

中でも、埼玉県では、さいたま・所沢・春日部など、千葉県では松戸・船橋・千葉など、神奈川県では相模原・川崎北部・横浜北部と言った二次医療圏での増加数は2010年~2025年の15年間で約2倍になると言われている。
平たく言うと、東京都区部を中心にした外縁部を後期高齢者人口増加地帯が、ベルトのように取り巻いているのである。

図7

この急増する後期高齢者人口のケア、医療と介護がとくに大きな問題となる。

図7.は東京圏の人口10万人あたりの常勤換算医師数を表したもの。
さすがに東京都は医師数が多く、全国平均の162.3人を上回ってているが、その他の3件は、全国水準を下回っている。関西都市圏の府県と比べても医師数不足は否めない。

顕著なのは埼玉県で、全国水準の70%にも達していない。図6.で見たように、今後後期高齢者人口が急速に伸びると推計されている地域が、現状最も医師不足なのは、かなり深刻な状況と言わざるを得ない。

図8

要介護人口(要支援含む)を見てみよう。(図8.)

東京圏では、今後約10年間に要介護人口が実数で約20.6万人増加する。東京圏4都県の中では、増加実数値は最も多いが、増加率は36%に留まっている。

一方、千葉県や埼玉県では、増加実数値は、それぞれ14.1万人、14.6万人に留まるが、増加率はそれぞれ59%、56%と非常に大きく、キャパシティが追いついていかない状況が大いに想像できる。

日本版CCRC構想有識者会議の構想素案では、以下のように謳っている。

「東京圏の高齢化が今後急速に進む結果、「医療介護ニーズが急増し、これに対応した医療介護サービスの確保が大きな課題となってくる。(中略)こうした状況下で、日本版CCRC構想は、地方移住を希望する東京圏の高齢者に対して、地方で必要な医療介護サービスを利用するという選択肢を提供する点で、東京圏の高齢化問題への対応方策として意義があると考えられる。」

図9

前回のコラムでは、地方移住を希望する東京圏民が増えているデータを紹介したが、そのことは住民基本台帳人口の人口移動を見てもあきらかである。

図9.は東京都区部を含めた全国政令指定都市65歳以上人口の転入・転出状況を見たものだが、東京都区部のみが突出している。地方移住は底堅い潮流になりつつあるのかもしれない。

図10

例えば、サービス付き高齢者向け住宅ひとつをとっても、1ヵ月のコストは約13万円地方の方が安い。(図10.)
需要と供給をバランスさせるために地方における受け皿づくりに事業の目が注がれてゆくに違いない。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男