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リハビリテーション、現実と理想のギャップ(中)

(承前)
前回のコラムでは、マクロ的な居宅系リハビリテーションの概況を浚ってみた。本稿では本題の「リハビリテーションに対する意識の格差」を利用者と提供者、双方の視点から眺めてみる。

図4.は利用者側から「リハビリテーション継続理由」(通所リハ対象)を挙げてもらったもの。
「身体機能を治したい」「筋力や体力をつけたい」「歩きたい」が、いずれも60%を超える上位3項目となっている。

このような身体(心身)的機能の改善に多くの希望を寄せられているのは、容易に想像できる。むしろ注目したいのは利用者のニーズの多様性にある。
「移動や食事、入浴や排泄などの動作ができるようになりたい」、「社会的活動ができるようになりたい」といった、日常生活、社会活動への参加要望も決して少ない数字ではないのだ。

一方、提供者側が認識しているリハビリテーションの目的とは何だろうか?

「心身機能の維持」が全体の半数近くを占める46.8%。これに「心身機能の回復」を含めると62.9%に上る。これを見ればニーズと提供サービスの間にさしたる乖離は認められない。

だが、日常生活動作(ADL)やそれよりやや高次の日常生活能力(IADL)に関するニーズの高さほどには、提供者側ではそれを合目的化していない。たとえば「家事ができるようになりたい」という要望は利用者側で36.3%に上るが。一方で提供者側の主目的としてADL・IADLを挙げた人は18.4%と、20%に満たない。
複数回答と単数回答の違いもあり、そのまま単純に比較することはできないながら、利用者側と提供者側の意識のすれ違いが窺える。

では、実際、居宅系リハビリテーションではどのようなプログラムが提供されているのだろうか?
図6.は通所リハ、図7.は訪問リハでそれぞれ提供されているプログラム内容である。

通所リハ、訪問リハともにハイスコアなのが、身体的機能訓練。とくに筋肉・筋力・関節等に関するプログラムが圧倒的に多い。
一方、日常生活動作領域に属するプログラムは、おしなべて実施度合いが低い。

通所リハと訪問リハを比較すると、「【趣味活動】の実施度合いが、通所リハで高い」ことが特筆される。
総じて言えば、医療系リハビリテーションは充実しているが、介護系リハビリテーションはまだまだこれからというところだろうか。

「高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書(平成27年3月/厚生労働省)」では、次のように述べている。

‘‘介護保険のリハビリテーションにおいては、「心身機能のみならず「活動」「参加」に係る働きかけが、医療リハビリテーション以上に重要である。ゆえに、利用者の社会的状況や意志に応じた柔軟な対応が求められる。”(引用終わり)

介護保険において利用者が受けた個別のリハビリテーションの時間は圧倒的に20分が多い(※)という。この時間の長さを考えれば、まだまだ画一的なリハビリテーションが支配的だと思わざるを得ない。(下に続く)

※平成23年度厚生労働省老人保健増進等事業「介護サービスの質の評価に関する利用実態を踏まえた介護報酬モデルに関する調査研究事業」を同省老人保健課で再集計

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男