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「ユニバーサルツーリズム」。顧客から見た評価と課題(上)

ユニバーサルツーリズム(以下、UTと略)とは、「すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり、高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指す」ムーブメントのことである。言ってしまえば簡単なことのようだが、旅行の送り手(旅行エージェント)と受け手(観光地及び宿泊施設・店舗)の足並みが揃わないと適うことではなく、そのマッチングは口で言うほどたやすいことではない。

国では、平成23年度(2011年度)に、「観光立国推進基本計画」を策定し、同年度に「旅行の送り手側の課題の検討」に着手、次年度には「旅行の受け手側の課題の検討」に入っている。その後、受け入れ拠点の強化及び旅行商品の供給促進に向けた検討など、地道な対策が講じられてきている。

このようなUTの促進に関する効果を検証するために、観光庁では平成27年度(2015年度)に、受け入れ拠点、旅行エージェント、一般消費者の三者に対してアンケートを行い、平成28年(2016年)3月にその結果を報告書として公表した。本アーティクルでは、その中から一般消費者対象の調査結果の一端をご紹介する。

旅行と認知症予防の関連性についてはすでに2016年より、東北大学とクラブツーリズムが共同研究をスタートさせている。既にプレ調査では、「頻繁に旅行に行くほど、あるいは明確な動機を持って旅行に行きその動機が満たされるほど、主観的幸福感が高くなる可能性が示唆された。高い主観的幸福感は、長寿命や認知機能の維持に影響すると考えられる。旅行が認知症の予防・抑制に効果的であるという可能性に、期待が持てる結果であると考えられる。」(クラブツーリズム㈱プレスリリースより抜粋、一部改変)という見解を明らかにした。

但し、どれほどUTインフラが整っていても、肝心な顧客満足が得られないなら、せっかくの取組みも画餅に終わる。定量・定性を含めた「顧客満足」に拠った調査結果を検討してみたい。

図1.はUT旅行商品を選んだ理由について問うた結果。

「バリアフリー等への配慮」が最も多く67%の方から評価を得ている。続いて、「旅行商品の内容」(65%)、「旅行商品の行程」(55%)が事前の評価としては高い項目として挙げられた。

上位項目の中で特筆されるのは、「旅行の受け手」側より「旅行の送り手」の対策が商品選択の決め手になっていることだ。UT商品をまず、選択してもらう際には、商品作りがいかに大切かということだ。

 

自由意見から具体的なニーズを見て行こう(図2.)。

ツアーの行程では、総じて「ゆとり」が評価されている。移動手段がすべて決まっていて、行程に不安がないことも評価されている。

参加者もUT商品選びの大きなファクターになっている。「参加者全員が障がいがあるため、気を使わずに参加できる」、「周りに気を使わなくてもよく、精神的なストレスが少ない」ということも偽らざる本音だと思う。「少人数のため、親しくなりやすい」、「旅行仲間と情報交換ができ、元気を分け合うことで普段より力が出るような気分になる」など、交流に高い価値を見出す意見も見られた。 結局のところ、UT商品の評価は「人」によって定まるという傾向がある。(「中」に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男