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加速する? 70代ネット、60代スマホデビュー(下)

(上から続く)
前回のアーティクルでは、ネットの利用率という定量的な部分に注目したが、今回はその利用目的や保有端末について、年齢階層別にどのような特徴があるのかを探ってゆきたい。
図3.はインターネットの利用目的を年齢階層別に明らかにしたもの。ネットの質的な価値を問うものだ。

利用率という量的な部分では、20歳代と60歳代で格段の違いがでたが、利用目的(言い換えれば利用価値)の優先順位をみると、20歳代から60歳代のすべての層において全く同じ結果となった。

第1位:仕事や調べものに役立つ情報を得る
第2位:趣味・娯楽に関する情報を得る
第3位:いち早く世の中のできごとや動きを知る
第4位:世の中の動きについて信頼できる情報を得る

という順位でインターネットの利用価値が確定されている。
「情報の格納庫」として辞書的に用いることに重きが置かれ、ニュース性、即時性あるいは情報の信頼性については、相対的に軽視されているということだ。もっとも、この結果はインターネットの媒体特性を考慮に入れれば、至極順当な結果とも言える。

いずれの選択肢も年齢階層が高くなればなるほど、その利用度は低下しているが、仔細に見れば、その落ち込み方は利用目的によって微妙に異なっている。4つの利用目的すべてにベストスコアを出した20歳代と、ワーストスコアの60歳代の数字を比べてみればわかる。
20歳代の利用度を100とした指数換算で60歳代はどのくらいになるのか?「仕事や調べものに役立つ情報を得る」、「趣味・娯楽に関する情報を得る」では、それぞれ、43と29になる。一方、「いち早く世の中のできごとや動きを知る」、「世の中の動きについて信頼できる情報を得る」では、両者とも17という数字になる。「ニュース性、即時性、信頼性」においては、60歳代での落ち込みが激しい。60歳代はこの方面でより懐疑的だということだ。

では、ハード面即ち、情報の入出力の端末はどうだろうか? 図4.は、主な情報通信機器の保有状況を年齢階層別に見たデータ。
一目見て、20~30歳代のスマートフォンの保有率の高さには驚かされる。図3.のインターネット利用度のデータで、「即時性」の評価が高いのも、常時携帯し、常時ネットにつなげられるスマートフォンあってのことこそだとも考えられる。

このグラフで最も注目したいのが、PCvsスマホの保有率の相克関係だ。2015年時点での分水嶺は40歳代だが、40歳代以上の世代にまだまだ伸びしろがあり、普及速度も急速であることから、2020年頃には50歳代にかけて分水嶺が後ずれしてくる可能性も充分ある。
モバイル同士で比較すれば、携帯vsスマホの分水嶺は、50歳をすでに上回っている。60歳代でスマホの保有率が携帯電話のそれを上回るのも時間の問題であろう。

その裏付けの一つとなるのが、60歳代のモバイル機器利用率のここ4年の推移。(図5.)
明らかなのがスマートフォンの伸び。若い世代と比べれば成長カーブは緩やかだが、携帯電話からスマートフォンへの移行は、着実に進んでいる。2015年の保有率は2012年比で大雑把に言えば5倍にも伸びている。
仮にこのままの勢いが継続し、尚且つ、携帯電話の利用率が今の趨勢のまま低下を続けると、2020年のどこかのタイミングで、スマートフォンの保有率が携帯電話を上回ることは必定だ。

2回に分けて、ネットのその端末の利用状況を駆け足で概観してきた。70歳代のネットの利用が、60歳代のスマホの保有が、当たり前になる時代がもうすぐそこまでやってきている。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男