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充実かつ前向き。シニアの社会的(貢献)活動事情(下)

(「中」から続く)
大半(70%)のシニア世代は「居住地域における社会的(貢献)活動をしていない」ことが明らかになった。(「上」参照)その理由は何だろう?
図12.は、全体の「しない理由」をまとめたものだ。

用意された8つの選択肢の中で、上位3項目が抜きんでている。即ち、
1.体力的に厳しい(38.3%)
2.時間的な余裕がない(28.3%)
3.活動する意思がない(27.4%)
が、トップ3に該当する。

いずれの項目も肯えるものではあるが、「意思はない」と明言した人が意外に多いのが特徴的と見た。
この3つの理由を以下、属性別に見てゆくことにしよう。

「時間的な余裕がない」を活動しない理由に挙げた人(図13.)では、「有職」と「無職」で大きな違いが出た。これは容易に頷けることだが、男女差がほとんどないのが意外な結果。
年齢階層別に見ても、男女とも60~64歳の向老期世代が突出している。男女を問わず、何らかの形で就業していたり、介護などの事情であったり、多忙な様子が見て取れる。

「時間的な余裕がない」と真逆の結果を示したのが「体力的に厳しい」の属性別傾向。(図14.)「無職」の人が47.6%と高率の数字となった。これは、「有職」の3倍近い数字となった。

男女別では、女性が7.6ポイント上回った。年齢階層が上がるほど「体力的に厳しく」なるのは、当然の結果だが、この男女差は気になるところではある。

年齢階層別に仔細に見れば、60~64歳の向老期と75歳以上の後期高齢者では、有為な差は認められない。問題は65~74歳の後期高齢者群である。男性の22.9%に比べ、女性では33.6%と女性が男性を10ポイント以上上回っている。

統計データからそれを裏づけられるものはあまりない。2013年現在の健康寿命は、男性71.19歳、女性74.21歳。むしろ女性の方が健康で普通の暮らしができていると考えられる。「日常生活に影響のある者率(※1)」では、65~69歳の年齢階層の男性が154.4、女性が150.6と女性の方が低い。同じく70~74歳の年齢階層でも、男性が204.5、女性が200.2とこれまた、女性の方が低い。

但し、「有訴者率(※2)では、65~69歳の年齢階層では男性が364.9、女性が406.8と逆に女性の方が高い。同じく70~74歳の年齢階層でも、男性が420.8、女性が467.2とこれまた、女性の方が高い。
なんとなくの不定愁訴を含めた、主観的な不健康感は女性の方により強い傾向が窺える。

※1 日常生活に影響のある者率:人口1,000人当たりの「現在、健康上の問題で、日常生活動作、外出、仕事、家事、学業、運動等に影響のある者(入院者を除く)」の数
※2 有訴者率:人口1,000人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)」の数

最後に、活動しない理由について「活動する意思がない」と答えた人について触れておこう。(図15.)
図12.のように「活動する意思がない」人は、「活動していない人」の27.4%。活動している人を含めた全体を分母にすると、19.1%になる。高齢者の約5人に1人は、「活動していないし、その意思もない人」になる勘定だ。

属性別では、無職が有職を10ポイント近く上回っている。年齢階層別では、65~74歳の前期高齢者層が、男女とも突出していて、75歳以上の層をも上回っている。統計的に有為な差異かどうかは別にして気になる数字だ。何事につけアグレッシブで、社会を引っ張ってきた団塊の世代を含む層だけに、にわかには、肯んずることができない。

グラフ化はしていないが、同調査からは、最終学歴と所得で統計的有為が認められた。ノブレス・オブリージュを反映した傾向が明らかになったということである。

近年では「高齢者=弱者」という概念は希薄になり、むしろ社会・地域資源と考える傾向(「プロダクティブ・エイジング」)という考え方が普及し始めている。その中でも他者に何らかの知や力を提供する「プロダクティブ・アクティビティ」が、高齢者の生活に好影響を及ぼすことも知られてきている。

全体の2割近くの人が「活動の意思がないから活動しない」。この数値を多いと受け止めるか、少ないと感じるかは人ぞれぞれだが、個人的にはいささか残念な結果と言えなくもない、と考えている。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室  中田典男