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妥当か意外か。勤労高齢者の消費支出の特徴とは?(下)

(中から続く)
可処分時間とゼロ・サムの関係にある選択的支出の最たるものは、何といっても行っても旅行だろう。そして旅行こそ数少ない(と言っては叱られるが…)、シニアマーケティングの成功事例なのだ。
この旅行関連の支出項目として、家計消費状況調査では、3つの費目が立項されている。即ち、パック旅行費(国内)、パック旅行(外国)、宿泊費だ。パック旅行費はいわゆる旅行商品と考えて差し支えないだろう。この中で、国内、外国のパック旅行の支出を目てゆくことにする。まずは「パック旅行費(国内)」から。(図7.)

パターンとしては、「スポーツ施設使用料」(図6.)に近い。年齢層が高くなるほど、支出額も大きくなっている。
「スポーツ施設使用料」と異なる点は、上げ幅が際立って大きいこと。そして、総世帯と勤労者世帯でどの年齢層でも、支出額にほとんど差異が認められないことである。65歳以上では、わずかに総世帯が勤労者世帯を上回っているが、取り立てて指摘するほどの値差とは言えない。
こと国内パック旅行に関して言えば、可処分時間と支出額の間に、ゼロ・サムの関係はないと見る方がよいだろう。

同じパック旅行でもこれが外国となれば、パターンは豹変する。(図8.)
年齢層と相関関係にあった正比例グラフは、一転。総世帯、勤労者世帯のいずれも、55~64歳のゾーンで支出額が突出したパターンになっている。65歳以上になれば、再び支出額はドーンと下がるが、それでも総世帯に限って言えば、他の年齢層を大きく上回っている。調査ではパック旅行の明確な定義はなされていないが、個人が計画する旅行は含まれていないと思われるので、この結果は充分に諾える。

高年齢層になるほど、総世帯と勤労者世帯の値幅が広がるのもこの費目の際立った特徴。中でも65歳以上のゾーンで値幅の広がりが大きい。55~64歳のゾーンでは、274円の値差が、65歳以上ではその2倍強に相当する534円にまで広がっている。やはり外国という時間的な制約の大きなコト消費は、勤労者にとってなかなか購入しづらい商品なのだろう。

最後に究極のサービス商材、医療について考察したい。「家計消費状況調査」では、「入院費」という費目が立項されている。ここで言う入院費とは、出産以外の入院に係る一切の費用のことで、長期入院(3か月以上)している世帯員以外の親族などへの入院費を直接支払っている場合を含む。人間ドックなどの健康診断のための入院は除外されているので、必需品に近い支出だと言える。
グラフのパターンは大方のご想像通りだろう。総世帯も勤労者世帯も、年齢層が高くなるほど入院に関わる支出は増加する。

ここで特徴的なのは、55歳以上のゾーンで、勤労者世帯の入院費が総世帯のそれを下回っていることだ。「入院というような【事件】がないから働ける」のか、「働いているから入院とは無縁なのか」。どちらの要素も含まれるだろうが、筆者の独断では後者のウェイトがより大きいと考えたい。

以上、3回にわたって、世帯主年齢65歳以上の勤労者世帯を中心にその消費支出を概観してきた。
総支出では確かに、高齢になれば支出は減るが、ここで取り上げたサービス商材をはじめ、コト消費では、高齢者層の支出が大きい費目も決して少なくないことがわかった。
そして、どの年齢層、どの費目でも高齢になればなるほど、勤労者世帯の支出が旺盛であることも明らかになった。

働いて、お金を使って、そして入院などという事態を回避できれば、これに越したことはない。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男