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「シニアが牽引するボランティア」のウソ、ホント(中)

(上から続く)
数あるボランティア活動の分野から、主要な活動を取り上げ、年齢階級別に過去4回の調査結果の推移を見てゆくことにしよう。まずは高齢者を対象とした活動から。(図4.)

他の活動種別に比べ、行動者数が少なく、目盛を細かく刻んでいるので、年齢階級が上がるほど急増している印象があるが、それでも年齢階級と行動者率は見事に相関している。65歳代後半が行動者率が最も高く、前期高齢者が高齢者を支えている様が明らかになった。全体傾向と同じく、年次を下るほど行動者率は低下しているが、60歳代後半の低下幅は、45~60歳の中年層ほど顕著ではない。
注目したいのは70歳以上の動向。この年齢階級では、2016年の行動者率が5年前を上回っている。全年齢階級の中でひとり気を吐いている格好だ。わずか0.6%と僅差だが、その数字は全年齢階級のなかで、2位につけている。(2016年)

図5.は「子どもを対象としたボランティア活動」の年齢階級別推移。
この分野の行動者率は、全体傾向や高齢者対象の活動とは真逆の結果が現れた。この分野の活動は、年次が新しくなるほど行動者が増えているのだ。子ども対象とあって、子育て一段落世代の行動者率が高いのは肯える結果だが、伸び幅も大きい。2001年比2016年の増加幅は、40~44歳で5.4%、45~49歳では7.4%と大幅な伸びになっている。さらに仔細に見ると、その伸び幅はほとんど2006年から2011年の5年間に獲得されている。一方、2011年から2016年にかけての5年間は、ほぼ横ばいか微減傾向を示している。

典型的な「若高老低」傾向は、いずれの年次でも同様だが、60歳以上のシニア層も15年間でスコアを伸ばしてきている。ことに65~69歳の年齢階級では、2001年の2.8%が、5年後の2006年には5.1%と倍増に近い数字になっている。その後は横ばい状態が続くものの、子ども対象のボランティ活動に、高齢者もプレゼンスを示し始めたと見てもよいだろう。

図6.は「スポーツ・文化・芸術に関係したボランティア活動」の年齢階級別推移。
これまで見てきた高齢者対象、子ども対象の活動とはまるで異なった結果になった。2001年から2006年にかけていずれの年齢階級も数字を伸ばしているのだが、2011年には再びダウン。さらに2016年になると若年層では数字を落としている反面、55歳以上の中高年、高齢者層では、どの年齢階級も2011年を上回る行動者率を記録している。

このグラフで面白いのは、過去4回の調査時点でトップを占める年齢階級が固定化していないことだ。たとえば高齢者対象の活動では、行動者率の増減はあっても、トップは常に65~69歳の年齢階級が占めている。同様に、子ども対象の活動では、40~44歳の年齢階級がトップまたはそれに準ずる地位を確保している。

一方、このスポーツ・文化・芸術に関係した活動では、調査時点ごとにその「主役」が入れ替わっているのである。
2001年時点でのトップは、40~44歳の4.9%。2006年では、45~49歳の6.7%。2011年は、50~54歳が4.6%でこれまたトップ。そして直近の2016年は55~59歳が4.9%でトップ。つまり、5年ごとに1つずつ年齢階級が上っているのだ。この年齢階級は5歳刻みだから、年齢を重ねても同じ世代が牽引し続けているということになる。
この世代を生まれ年で換算すると、昭和32年~昭和36年生まれの世代に該当する。シニア予備軍と言われている世代であり、その昔はシラケ世代、新人類と呼ばれた世代でもある。
行動者の実数が少ないので予断は禁物だが、何らかの世代的な特性があるのかもしれない。(下に続く)

株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男