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健康状態の良否を決めるのは、年齢?、それとも?(中)

(上から続く)
「健康状態が良いか、良くないか」というのは、ある意味主観に傾きがちな、抽象度の高い設問である。では、もう少し客観性の高い設問「健康上の問題による日常生活への影響があるか、ないか」の答はどうだろうか?

図5.は、年齢階級別に見たもの。年齢階級が上がるにつれ、影響があると回答する人が増加している。年齢と健康上の問題による影響は、きれいな正の相関関係を保持しているわけだ。

このデータに拠れば、65~69歳の「影響あり」比率はわずかに15.3%。それより若い世代の55~59歳、60~64歳と比べてもほぼ横並びの数字である。
「影響あり」比率がグンと高まるのが70歳以上。70~74歳で5.1%増(65~69歳比)、75~79歳で7.4%増(70~74歳比)、80歳以上になると9.0%増(75~79歳比)と増加カーブに加速度がついてくる。(上)に掲載した「健康状態が良くない」比率と比べて、年齢階級間の増加カーブはより急になっている。

このデータで気になることがある。「健康状態が良くない」(仮にAとする)と答えた比率より、「健康上の問題で日常生活に影響がある」(仮にBとする)と答えた比率の方が高いことだ。文面を額面通りに受け止めれば、「健康状態に問題がある」という自覚がある以上、「健康状態はよくない」という認識を前提としているので、その数値はA>B(あるいはA≒B)になるはずだ。この結果はどう解釈すべきだろうか?

AとBの差異を年齢階級別に仔細にみると、55~79歳と80歳以上で傾向が大きく異なっている。前者の差異が概ね1~2%内外に留まっているのに比べ、80歳以上では、7.9%もの乖離があるのだ。(A:28.9%、B:36.8%)
80歳以上の人には、普通というグレーゾーンを選択した人の中に、ある一定の「影響あり」グループが含まれていることになる。一病息災を健康と考えているのか、慢性の外科的疾患などで、健康状態は普通と認識しているものの日常生活には影響あると意識している人が一定数存在すると考えてよいだろう。

図6.は、世帯構成別に見たもの。女性単身世帯の「影響あり」率の高さが際立つ結果となった。その数値29.7%は、男性単身世帯を11.6%、夫婦のみ世帯を11.1%も上回る突出ぶりである。
AとBを比較してみると、男性単身世帯ではAがBを5%強上回る自然な結果になったが、女性単身世帯では逆にBがAを5%上回っている。年齢階級別で見た80歳以上の7.9%ほどの乖離は見られないものの、要因は同様と見てよいだろう。
一方、夫婦のみ世帯のはA<Bという数字だがその差は1.9%と小さく、誤差範囲と見て差し支えないだろう。

図7.は平均収入額別に見たもの。Aと同様、多少の例外はあるものの、収入が少ないグループほど「健康上の問題による日常生活の影響」を有する比率は高くなっている。平均月収5~10万円のグル―プでは、30.1%に上る一方、最少の60万円以上のグループでは、わずか11.8%に留まっている。両者の乖離幅も18.3%と大きい。
せつなくもあるが、収入格差=健康格差という図式はこのデータからも明らかになった。
(下に続く)

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男